Guhan Subramanian, Using the Deal Price for Determining `Fair Value’ in Appraisal Proceedings

This Essay presents new data on appraisal litigation and appraisal outs. I find that appraisal claims have not meaningfully declined in 2016, and that perceived appraisal risk, as measured by the incidence of appraisal outs, has increased since the Dell appraisal in May 2016. After reviewing current Delaware appraisal doctrine, this Essay proposes a synthesizing principle: if the deal process involves an adequate market canvass, meaningful price discovery, and an arms-length negotiation, then there should be a strong presumption that the deal price represents fair value in an appraisal proceeding; but if the deal process does not have these features, deal price should receive no weight. This approach would represent a middle-ground between the competing approaches advanced by twenty-nine law, economics, and finance professors in the DFC Global appraisal, currently on appeal to the Delaware Supreme Court.

わが国の有力説(通説?)に近い意見のように思えます。

via Lowenstein Sandler

最近のデラウェア州における企業価値算定手法について

 今日の最終講義には、様々な点で大変感銘を受けました。自分の勉強が足りないことを感じましたし、新しい示唆というものは幾らでもあるものだと感じました。最終講義の中で、最近のデラウェア州における企業価値算定手法について言及がありました。拙著『証券市場における情報開示の理論』80頁注205(弘文堂,2016)では、次の通り言及しています。

デラウェア州の裁判所は,価値評価の方法について,「金融業界で受け入れられていると一般に考えられている方法」と述べた上で,価値評価の技術革新に応じて,違った価値評価の方法を受け入れている。Weinberger v. UOP, Inc., 457 A.2d 701, 713 (Del. 1983); Global GT LP v. Golden Telecom, Inc., 993 A.2d 497, 517 (Del. Ch. 2010) (Strine, V.C.), aff’d, 11 A.3d 214 (Del. 2010) (資本コストの算定に際し,かつて衡平法裁判所が採用した歴史的なエクイティ・リスク・プレミアムではなく,長期的なエクイティ・リスク・プレミアムの期待値を採用した事例。裁判所は,専門家の新たな意見を採用することの意義について言及している).

 より詳しくは、同事件におけるTestimony of Petitioners’ Expert Witness, Paul A. Gompers, 2009 WL 8399149 (Oct. 15, 2009)をご参照下さい。

シナジー分配価格がナカリセバ価格を下回る例(現金が対価の場合)

シナジー分配価格がナカリセバ価格を下回ることがありえるかといえば,ありえると思います。明示的に買収の公表直後に株価が双方ともに上昇しながら,シナジー分配価格がナカリセバ価格を下回る場合を考えてみます。

次の前提を置きます。

  • 買収会社A(Acquiror社)と買収対象会社T(Target社)が存在するとします。吸収合併を用いた,AによるTの買収を本件買収といいます。
  • 買収対象会社AとTの株価は100円で,それぞれの発行済株式総数は,100株であるとします。すなわち,AとTの時価総額は,それぞれ1万円です。
  • AおよびTの双方に負債その他の資本は存在しないものとします。非事業用資産などは存在せず,事業価値が株主価値を表すものとします。
  • 税金,金利および時間価値(time value of money)は無視します。
  • AおよびTのベータは1とし,本事例の期間において一定とします。
  • Aは,Tを現金で買収するとします。交渉の結果,Tの株式一株について,現金120円で買収するとします。
  • 市場が閉じた後に,Aは,本件買収を発表しました。翌日,Aの株価は,120円に,またTの株価は120円になりました1
  • Tに関する限り,本事例において,Tの事業,ひいては,株価に影響を与える情報は,Aによる買収のみであったとします。特に,Tの株主総会で本件買収が承認されたことは,株価に影響を与える情報ではないとします。
  • AとTとの買収が実行される可能性が当程度高いため,Tの株価は,本件買収の公表後,効力発生日まで120円に固定されていたとします。

テクモ事件(最二小決平成24年2月29日)に鑑みて,次の前提をおいた上で,シナジー分配価格について考えてみたいと思います。

  • AとTとの間には「相互に特別な資本関係がない」とします。また,AとTの「株主の判断の基礎となる情報が適切に開示された上で適法に株主総会で承認」されるなど,「一般に公正と認められる手続きにより〔組織再編〕の効力が発生した」。また,「当該株主総会における株主の合理的な判断が妨げられたと認められるに足る特段の事業」はない。すなわち,テクモ事件における「〔株式交換〕比率が公正なものとみ」られる前提を満たしているとします。

今回の事案であれば,シナジー分配価格は,120円となると考えられます。

次に,Tのナカリセバ価格について,次のような前提を考えてみます。

  • 本事例において,組織再編を承認した翌日から株式買取請求権を行使することができる期間の初日までに市場平均が50%増加したとします。それ以外の期間において,市場平均は,一定であるとします。

この前提におけるTのナカリセバ価格について考えてみます。Tのベータは,1です。そして,関連する期間,Tは,Tの事業,ひいては,株価に影響を与える情報をまったく開示しなかったのですからTの株価は,市場平均に連動していたと考えられます。組織再編を発表した翌日から株式買取請求権を行使することができる期間の初日までに市場平均が50%増加したのですから,組織再編を承認した翌日から株式買取請求権を行使することができる期間の初日までにTの株価も50%増加することが予想されます。組織再編が公表される前の価格が100円ですから,Tのナカリセバ価格は,株式買取請求権を行使することができる期間の初日には150円になるということになります。

ある株主が株式買取請求権を行使できる場合,シナジー分配価格に基づく請求も行えるでしょうが,今回の事例の場合,150円を求めてナカリセバ価格の主張を行うことが合理的になります2

  1. すなわち,この事例では,本件買収によって4000円のシナジーが生じました。100 * (120-100) + 100 * (120-100) = 4000. []
  2. テクモ最高裁判決は,次の通り判示しています。「株式が上場されている場合、市場株価が企業の客観的価値を反映していないことをうかがわせる事情がない限り、『公正な価格』を算定するに当たって、その基礎資料として市場株価を用いることには合理性があるといえる。そして、株式移転計画に定められた株式移転比率が公正なものと認められる場合には、株式移転比率が公表された後における市場株価は、特段の事情がない限り、公正な株式移転比率により株式移転がされることを織り込んだ上で形成されているとみられるものである。」そのため,シナジー分配価格は,今回の例で言うと,120円(株式買取請求がされた日の株価)になりそうです。 []

シナジー分配価格がナカリセバ価格を下回る例(株式が対価の場合)

シナジー分配価格がナカリセバ価格を下回ることがありえるかといえば,ありえると思います。明示的に買収の公表直後に株価が双方ともに上昇しながら,シナジー分配価格がナカリセバ価格を下回る場合を考えてみます。

次の前提を置きます。

  • 買収会社A (Acquiror社)と買収対象会社T (Target社)が存在するとします。吸収合併を用いた,AによるTの買収を本件買収といいます。
  • 買収対象会社AとTの株価は100円で,それぞれの発行済株式総数は,100株であるとします。すなわち,AとTの時価総額は,それぞれ1万円です。
  • AおよびTの双方に負債その他の資本は存在しないものとします。非事業用資産などは存在せず,事業価値が株主価値を表すものとします。
  • 税金,金利および時間価値(time value of money)は無視します。
  • AおよびTのベータは1とし,本事例の期間において一定とします。
  • 本事例の期間において市場平均は,一定であるとします。
  • Aは,Tを株式で買収するとします。交渉の結果,Tの株式一株について,Aの株式一株を割当てるものとされました。
  • 市場が閉じた後に,Aは,本件買収を発表しました。翌日,Aの株価は,120円に,またTの株価は120円になりました1
  • Tに関する限り,本事例において,Tの事業,ひいては,株価に影響を与える情報は,Aによる買収のみであったとします。特に,Tの株主総会で本件買収が承認されたことは,株価に影響を与える情報ではないとします。

まず,Tのナカリセバ価格について考えてみます。Tのベータは,1です。そして,関連する期間,Tは,Tの事業,ひいては,株価に影響を与える情報をまったく開示しなかったのですからTの株価は,市場平均に連動していたと考えられます。市場平均が一定だったのですから,Tの株価も一定ということになります。組織再編が公表される前の価格が100円ですから,Tのナカリセバ価格も一定ということになります。

テクモ事件(最二小決平成24年2月29日)に鑑みて,次の前提をおいた上で,シナジー分配価格について考えてみたいと思います。

  • AとTとの間には「相互に特別な資本関係がない」とします。また,AとTの「株主の判断の基礎となる情報が適切に開示された上で適法に株主総会で承認」されるなど,「一般に公正と認められる手続きにより〔組織再編〕の効力が発生した」。また,「当該株主総会における株主の合理的な判断が妨げられたと認められるに足る特段の事業」はない。すなわち,テクモ事件における「〔株式交換〕比率が公正なものとみ」られる前提を満たしているとします。
  • Aが本件買収を公表し,AとTの株主総会で本件買収が承認された後,Aの事業が不調であることが明らかになったとします。これにより買収後の事業価値(=株主価値)は,16000円に下落したとします。すなわち,株価は,AおよびTともに80円まで下落することになります(16000 / 200 = 80)。
  • その後,(株式買取請求権の行使期間を含む)組織再編の効力発生日まで,株価が80円で推移したとします。

ある株主が株式買取請求権を行使できる場合,シナジー分配価格に基づく請求も行えるでしょうが,今回の事例の場合,100円を求めてナカリセバ価格の主張を行うことが合理的になります2

この例では,対価が株式の場合を考えてみました。対価が現金の場合も考えられますが,省略します。

  1. すなわち,この事例では,本件買収によって4000円のシナジーが生じました。100 * (120-100) + 100 * (120-100) = 4000. []
  2. テクモ最高裁判決は,次の通り判示しています。「株式が上場されている場合、市場株価が企業の客観的価値を反映していないことをうかがわせる事情がない限り、『公正な価格』を算定するに当たって、その基礎資料として市場株価を用いることには合理性があるといえる。そして、株式移転計画に定められた株式移転比率が公正なものと認められる場合には、株式移転比率が公表された後における市場株価は、特段の事情がない限り、公正な株式移転比率により株式移転がされることを織り込んだ上で形成されているとみられるものである。」そのため,シナジー分配価格は,今回の例で言うと,80円(株式買取請求がされた日の株価)になりそうです。 []