Comcast Corp. v. Behrend, 133 S. Ct. 1426 (2013)

概要

Comcast判決*1は,Amgen事件の後,2013年3月27日に下された最高裁判決です。Comcast判決は,独占禁止法に関連してクラスアクションが提起され,そのクラスの認定が争われた事案です。独占禁止法と証券法という違いはありますが,その判示が証券クラスアクションにも影響を与える可能性があります。

クラスアクションの事案なので,証券クラスアクションにも関係がありますが,事案は,独占禁止法なので,ごく簡単に紹介します。判旨は飛ばしますので,ご興味のある方は,原文をどうぞ。

研究

既存の論点の確認

本件における法定意見は,連邦民事訴訟規則23に関するこれまでの判例を踏襲しつつ,損害賠償の点について,新たな論点を提起するものと理解できます。最高裁判所は,既に明らかになっている連邦民事訴訟23に関する様々な点を再度確認しており,この点については,異論がないものと思われます。最高裁が過去の判決と整合的な判断を示している点として,次のような点が挙げられます。

  • 原告が規則23への準拠を立証しなければならないこと*2

  • 規則23(a)の立証は,厳格な分析を要求すること*3

  • 規則23(a)の立証が本案の立証と重複することを許容すること*4

  • 規則23(a)の立証の原則が規則23(b)にも適用となること5。実際,規則23(b)(3)の立証の要件は,規則23(a)よりも厳しいこと6

  • クラスの認定段階での損害の立証の要否

損害賠償の問題は,独占禁止法の事案でも証券法の事案でも共通に存在します。独占禁止法の事案において,損害賠償額の総額の算定は,証券法の事案よりも難しいかもしれません。なぜなら,証券市場において株価を用いた損害賠償額の算定という方法が,独占禁止法の事案では用いることができないからです。実際勉強が足りなくてよくわかっておりません。

クラスのメンバー個々の損害賠償額の算定額になる場合,証券法も独占禁止法も大きな違いはないように思えます。証券法の事案において,個々の株主が被った損害額は,違い得ます。なぜなら,真実の開示が行われた後,個々の株主が証券を売却するタイミングが違い,損害賠償額の算定においてこれを考慮することが可能だからです*7。最終的には,株価の変動を考慮した上で,一定の計算方法に従って個々のクラスのメンバーが決定されるものと思われます。この際には,個々の株主の持株数や証券の売却時期などが考慮されるでしょう。

独占禁止法は,詳しくないのですが,判決を見る限り,独占なり不公正取引のの主張にもとづき生じた損害額についてのみ損害賠償額が認められ,その損害額の算定は,正確(exact)ではなくて良いものの,違反の効果に関する損害の主張と損害賠償額の主張が整合的でなければならないと判示しているようです*8

本判決は,独占禁止法の文脈で,規則23の認定にあたり,損害額の立証を要するものと理解することができそうです*9。そして,解釈として,証券法の事案でも規則23の認定にあたり,損害額の立証を要すると理解することもできそうです。すると,規則23の認定にあたり,損害額に付随して,過去の事案において立証が不要であるとされた損害因果関係や重要性の立証の問題が再浮上するように思われます。なぜなら,証券法の事案では,損害額の立証に関して,損害因果関係や重要性の立証を切り離すことが難しいからです。

一年半ほど前に研究会でHalliburton判決の報告をした際に,損害額は,各投資家でばらばらなのに,どうして規則23(b)(3)に基づくクラスの認定が認められるのか,という質問を受けました。その時の私の回答は,「よくわからないけれど,米国では,クラスアクションの認定について個々の株主について損害額が違っていても良いようです。例えば,公害のクラスアクションでは,個々の被害者の損害額が違うにも拘わらず,クラスが認められています」というものでした*10。今から思い返してみると,その質問は,的を得ていて,もう少し調べてから回答すべきだったと思います。Comcast判決を読む限り,「個々の被害者の損害額が違うにも拘わらず,クラスが認められている」というのは言い過ぎで,この問題は,まだ解決していないように思えます。

*1:Comcast Corp. v. Behrend, 133 S. Ct. 1426 (2013). Comcast判決の評釈として,宇野伸太郎「クラスアクションを起こしにくくする米最高裁判決と日本」法と経済のジャーナルAsahi Judiciary(2013年06月12日)。

*2:Id. at 1432 (“To come within the exception, a party seeking to maintain a class action `must affirmatively demonstrate his compliance’ with Rule 23. Wal-Mart Stores, Inc. v. Dukes, 564 U.S. —, —, 131 S.Ct. 2541, 2551–2552, 180 L.Ed.2d 374 (2011).”).

*3:Id. at 1432 (“Repeatedly, we have emphasized that it may be necessary for the court to probe behind the pleadings before coming to rest on the certification question,' and that certification is proper only ifthe trial court is satisfied, after a rigorous analysis, that the prerequisites of Rule 23(a) have been satisfied.’ Ibid. (quoting General Telephone Co. of Southwest v. Falcon, 457 U.S. 147, 160-161, 102 S.Ct. 2364, 72 L.Ed.2d 740 (1982).).”).

*4:Id. at 1432 (“Such an analysis will frequently entail `overlap with the merits of the plaintiff’s underlying claim.’ 564 U.S., at —, 131 S.Ct., at 2551.”).

*5:Id. at 1432 (“The same analytical principles govern Rule 23(b).”).

*6:Id. at 1432 (“If anything, Rule 23(b)(3)’s predominance criterion is even more demanding than Rule 23(a). Amchem Products, Inc. v. Windsor, 521 U.S. 591, 623–624, 117 S.Ct. 2231, 138 L.Ed.2d 689 (1997).”).

*7:なお,米国における損害賠償理論が取得時差学説ではないとの理解に立っています。Dura Pharmaceuticals, Inc. v. Broudo, 544 U.S. 336 (2005).

*8:Id. at 1433 (“Calculations need not be exact, see Story Parchment Co. v. Paterson Parchment Paper Co., 282 U.S. 555, 563, 51 S.Ct. 248, 75 L.Ed. 544 (1931), but at the class-certification stage (as at trial), any model supporting a `plaintiff’s damages case must be consistent with its liability case, particularly with respect to the alleged anticompetitive effect of the violation.”’).

*9:反対意見は,法廷意見が,クラスアクションの認定の前提として,クラス全体にかかる損害が算定可能であることを要求するものと理解すべきではないと明示的に述べています。Comcast, 133 S.Ct. at 1436 (Ginsburg and Breyer, JJ., dissenting) (“[T]he decision should not be read to require, as a prerequisite to certification, that damages attributable to a classwide injury be measurable `on a class-wide basis.”’).

*10:実際,反対意見は,この点について多数の引用しています。Comcast, 133 S.Ct. at 1437 (Ginsburg and Breyer, JJ., dissenting) (citing, e.g., Advisory Committee’s 1966 Notes on Fed. Rule Civ. Proc. 23, 28 U.S.C.App., p. 141 ([A] fraud perpetrated on numerous persons by the use of similar misrepresentations may be an appealing situation for a class action, and it may remain so despite the need, if liability is found, for separate determination of the damages suffered by individuals within the class.''); 2 W. Rubenstein, Newberg on Class Actions S 4:54, p.205 (5th ed. 2012) (ordinarily,individual damage[s] calculations should not scuttle class certification under Rule 23(b)(3)”). 更に,反対意見は,クラスに共通の責任の問題が個々のクラスの損害賠償額の問題に優越する場合には,クラスの認定が与えられれるということは,既に定まった規範であると述べています。Comcast, 133 S.Ct. at 1437 (it remains theblack letter rule’ that a class may obtain certification under Rule 23(b)(3) when liability questions common to the class predominate over damages questions unique to class members. 2 Rubenstein, supra, S 4:54, at 208.”).

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