湯原心一「会社と厚生」成蹊大学法学部編『未来法学』109〜128頁(有斐閣、2022)の訂正

 成蹊大学法学部創設50周年記念論集である『未来法学』に寄稿した「会社と厚生」に誤りがありましたので、次の通り、訂正いたします。校正の機会を与えて頂いたのに、気付かずに失礼しました。

 程なく、有斐閣のウェブサイトにも訂正が掲載されるはずです。

■125頁13行

(正)

\( = \sqrt{E(V_{E} \mid a)} + \sqrt{E(V_{d1} \mid a)} + \sqrt{E(V_{d2} \mid a)} \)

(誤)

\( = E(V_{E} \mid a) + E(V_{d1} \mid a) + E(V_{d2} \mid a) \)

リーマンショック前後のTOPIX

 リーマン・ブラザーズの破綻は,2008年9月15日(日)(米国時間)です。Wikipediaのリーマン・ショックの項目では,「日経平均株価も大暴落を起こし,9月12日(金曜日)の終値は12,214円だったが,10月28日には一時は6,000円台(6,994.90円)まで下落し,1982年(昭和57年)10月以来,26年ぶりの安値を記録した。」と記されています。日本の株価は,翌営業日から暴落したでしょうか。

 調べてみると,翌16日の株価の下落は,約5%に留まっています。しかも,9月24日の終値は,12日の終値の99%で,そこまで指標を戻しています。例えば,この間(例えば,2008年9月15日から9月24日まで)に株価が下落した日本の会社がある場合,その株価下落は,リーマン・ショックと関係があるものといえるでしょうか。

 例えば,もし,その会社がリーマン・ブラザーズと取引関係にあって損失を被るということであれば,株価の下落をリーマン・ショックと結びつけることは適切であるように思います。しかし,会社がリーマン・ブラザーズと取引関係を有しないような場合,日経平均やTOPIXを超える株価の下落が発生したとしても,リーマン・ショックと結びつけて株価が下落したとはいえないように思います。

 東京高判平成30年3月19日金判1545号14頁〔プロデュース事件〕を検討する方には、この点を是非理解していただきたい。

米国会社・証取法判例研究の一覧

  • 米国会社・証取法判例研究の一覧です。CINIIからデータをダウンロードしましたが,どうやら6件ほど検索結果に漏れがあるようです。

そもそもCINIIのデータに誤りがあるようですし,また,判決の表題が収録されていないものも多いので,原本でのご確認をお願い致します。

〔追記2016年10月14日〕 CINIIからデータをダウンロードして更新しました。

続きを読む

米国の法学教授の引用数ランキング

〔2014年6月17日追記〕

Rank Name Institution Total Citations Age in 2013
1 John Coffee, Jr. Columbia University 1490 69
2 Lucian Bebchuk Harvard University 1120 58
3 Stephen Bainbridge University of California, Los Angeles 1010 55
4 Reinier Kraakman Harvard University 790 64
5 Donald Langevoort Georgetown University 790 62
6 Stephen Choi New York University 780 47
7 Ronald Gilson Columbia University, Stanford University 780 67
8 Roberta Romano Yale University 740 61
9 Lynn Stout Cornell University 740 56
10 Henry Hansmann Yale University 710 68
Jonathan Macey Yale University 1220 58
David Skeel University of Pennsylvania 740 52

〔2014年6月14日〕

  • 2009年から2013年

    • Cass Sunstein Harvard University 5540 59
    • Erwin Chemerinsky University of California, Irvine 3010 60
    • Richard Epstein New York University, University of Chicago 2700 70
    • Eric Posner University of Chicago 2450 48
    • Mark Lemley Stanford University 2360 47
    • William Eskridge, Jr. Yale University 2070 62
    • Mark Tushnet Harvard University 1910 68
    • Akhil Amar Yale University 1790 55
    • Lawrence Lessig Harvard University 1750 52
    • Daniel Farber University of California, Berkeley 1740 63
    • Laurence Tribe Harvard University 1740 72
    • Judge Posner (Chicago) 6980
    • Judge Easterbrook (Chicago) 2130
    • Judge Calabresi (Yale) 1290
  • 税法の教授

Leiter教授は,新しいロースクールのランキングのサイトを立ち上げるようです。

via Professor Bainbridge

米国の証券市場は不正に操作されているのか

マイケル・ルイスMichael Lewisの最新作を基にした60 Minutesのビデオです。とても面白いです。

〔2014年4月3日追記〕少し古いですが,BusinessWeekの「注文がどのように処理されるのか」も掲げておきます。

〔2014年4月6日追記〕今日の日経記事にVirtu Financialが取り上げられていました。その中で,損失を被った日が「1238日」のうち1日とありましたが,私が調べた限りでは,1278日のうち1日です。

The chart below illustrates our daily Adjusted Net Trading Income from January 1, 2009 through February 28, 2014. As a result of our real-time risk management strategy and technology, we had only one losing trading day during the period depicted, a total of 1,278 trading days.1

続きを読む

  1. Virtu Financial, Inc., Amendment to Registration Statement (Form S–1/A) (Mar. 27, 2014). []

東京地決平成25年9月17日金判1427号54頁〔セレブリックス事件〕

全部取得条項付種類株式の価格決定の事件ですが,株式買取請求権の公正な価格と同じ論点ということで話を進めます。まず,平成17年改正において,ナカリセバ価格のままにすべきで,公正な価格とすべきではなかったのではないかという論点があります1

続きを読む

  1. 江頭憲治郎「裁判における株価の算定—日米比較をまじえて—」司法研修所論集122号36頁,60頁(2013)。 []

ナッジの法政策への利用

法学者によって行動経済学について書かれた論文として,尾崎安央「『行動経済学に基づく法と経済学』と会社法制—公開型株式会社における株主像を検討するにあたって—」尾崎安央=川島いづみ編『石山卓磨先生上村達男先生還暦記念論文集比較企業法の現在—その理論と課題』241頁(成文堂 ,2011)があります。その中で,Richard H. Thaler & Cass R. Sunstein, Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness (update ed. 2009)1 が言及されています2

続きを読む

  1. 邦訳は,リチャード・セイラー=キャス・サンスティーン(遠藤真美訳)『実践行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択』(日経BP社,2009) []
  2. 尾崎安央「『行動経済学に基づく法と経済学』と会社法制—公開型株式会社における株主像を検討するにあたって—」尾崎安央=川島いづみ編『石山卓磨先生上村達男先生還暦記念論文集比較企業法の現在—その理論と課題』241頁,260頁注22(成文堂 ,2011)(引用省略)。 []