「草野耕一最高裁判事就任記者会見の概要」(2019年2月13日)

【記者】草野判事はこれまで企業や経済に関わる仕事をされてきたと思いますけれども,そういった経験を最高裁判事の職務にどう生かしていきたいとお考えでしょうか。

【判事】おそらく2点申し上げることができるかと思います。1点目は,企業の世界というのは,いかにパイを大きくするかということが,いかにパイを公平に分配するかという問題と同等かそれ以上に重要な場面が多くございます。最高裁判事としても,そういう2つの面,すなわち,できるだけ分配するパイを大きなものとするということと,それを公平に分配することという2つのことを考えていくという点については,これまでの経験が役立つと思います。それから,もう1点,技術的な問題で恐縮ですけれども,経済の世界というのは,法律あるいは法解釈を変えることによって経済の仕組みが変わるという面がございます。それは程度の差はあれ,あらゆる法理論にいえることです。法解釈を変えるとどのようにそれが社会に影響を与えるのか,ということを帰納的に考えてあるべき法律論を考察するという思考方法,これをこれまでの経験をいかして今後とも使っていきたいと考えた次第であります。

M&Aは価格を上げるが効率性は上げない

himaginary氏が表題の記事を掲載しています。himaginary氏による,Bruce A. BlonigenとFRBのJustin R. Pierceの「Evidence for the Effects of Mergers on Market Power and Efficiency」の要旨の抄訳は,次の通り。

企業の合併と買収(M&A)が生産性と市場支配力に与える影響の研究は、その2つの効果を分離するのが難しいことから困難なものとなっていた。我々は新たに開発された技法を使い、工場レベルの詳細なデータを用いて様々な産業における生産性と値上げを別々に推計した。差の差分析の枠組みを適用したところ、M&Aが平均的な値上げ幅の増加に結び付いていることを見い出したが、工場レベルの生産性の効果についての証拠は見い出すことができなかった。M&Aが、生産をより効率的な工場に割り当て直したり、管理業務を減らしたりすることによって効率性を上昇させるか、という点についても調べたが、そうした経路についても平均的には証拠は得られなかった。企業の合併の決断の内生性という問題に対処するため様々な手法を採ったが、この結果はそれに対し頑健であった。