財産権制度の測定

himaginary氏による要約の和訳は次の通りです。

標準的な財産権の括りにおいて、異なる要素――所有権と譲渡権など――は都市開発などの結果にどのように違う形で影響するだろうか? 本稿は、確定していない財産権を都市の地価と密度の標準的なモデルに織り込み、土地と財産への投資、未登記の状況、および土地の利用の効率性に関して予測を行う。我々の実証分析では、190ヶ国の土地の登記と譲渡に関する制度データを、様々な都市の最終形態と結び付けた。実証結果は概ねモデルの予測と整合的であり、より大きくはデムゼッツ(1967)の財産権制度のアプローチと整合的である。実際のところ、我々は、譲渡を円滑化する制度の質が世界全体で時間と共に改善したことを立証した。

弱い所有権は、より良い住宅を建てたり、より多くの土地を保有したりするインセンティブを減じる。登記の制限と都市のスラムとの間の実証的な結び付きは、我々の理論に沿うものである。財産の譲渡可能性の制限は、職場と居住地のマッチングを難しくする。財産譲渡に必要な手続きの数と交通渋滞との間の実証的な結び付きもまた、我々のモデルと整合的である。我々はまた、住宅ローン金融の発達は登記と譲渡の両制度に依拠するが、特に後者に依拠することを示した。

via himaginary

もう二度と計量経済学に触れない学生への計量経済学の教え方

Marc Bellemare writes:

私が理解したところでは、この論文は、予測やデータ生成過程の適切なモデル化を教えるべきではない、とは言ってない。ただ、それを教えるのは、因果関係の推定や研究デザインの根底をなす、相対的に単純で、難易度が低く、それでいて同程度に有用な考えを教えた後にするべきだ、と言っているのである。

私の見たところでは、多くの学部生は計量経済学の別の講座を取ることは決してない。学部生を教える教師としての我々の仕事は、責任ある市民を育てることであって、研究者を育てることではない。私が思うに、単なる相関に基いてなされた因果関係の主張にだまされないことを教えるのが、学生にとってよりためになると思う。私にとってそれは、回帰にどの検定方法を当てはめるかを知るよりも遥かに重要な、批判的思考法の構成要素である。

via himaginary氏

理論経済学から実証経済学へ

himaginary氏

フォックスが引用したテキサス大学のダニエル・ハマーメッシュ*1の2013年のJournal of Economic Literature論文によると、主要誌に掲載された理論系論文の割合は、1983年のピーク時には6割程度に達していたが、2011年には3割を切ったとのことである。低下のかなりの割合は1993年までに起きているが、その明らかな理由の一つはパソコンの普及である、とフォックスは述べている。その後のインターネット時代の到来と資料のデジタル化によって、公表データをそのまま使うのではなく独自にデータを加工した研究が増え、それが1993年以降の実証系研究の増加の殆どであった、とフォックスは言う。またフォックスは、実験経済学の研究が増えていることも指摘している。

via himaginary氏

M&Aは価格を上げるが効率性は上げない

himaginary氏が表題の記事を掲載しています。himaginary氏による,Bruce A. BlonigenとFRBのJustin R. Pierceの「Evidence for the Effects of Mergers on Market Power and Efficiency」の要旨の抄訳は,次の通り。

企業の合併と買収(M&A)が生産性と市場支配力に与える影響の研究は、その2つの効果を分離するのが難しいことから困難なものとなっていた。我々は新たに開発された技法を使い、工場レベルの詳細なデータを用いて様々な産業における生産性と値上げを別々に推計した。差の差分析の枠組みを適用したところ、M&Aが平均的な値上げ幅の増加に結び付いていることを見い出したが、工場レベルの生産性の効果についての証拠は見い出すことができなかった。M&Aが、生産をより効率的な工場に割り当て直したり、管理業務を減らしたりすることによって効率性を上昇させるか、という点についても調べたが、そうした経路についても平均的には証拠は得られなかった。企業の合併の決断の内生性という問題に対処するため様々な手法を採ったが、この結果はそれに対し頑健であった。

ナッジが逆効果になる時

himaginaryさんの日記からナッジが逆効果になる時

しかし、ナッジマーケティングは良いことづくめではない。熱心に取り組むあまり、マーケティング担当者はナッジの使用に際しての幾つかの基本的な懸念を見過ごしてきた。そうした地雷原を理解していない会社は、マーケティングで逆効果を招くこともあり得る。きちんと考えられていないナッジは時限爆弾となって、爆発すれば会社の評判と忠実な顧客の信頼を損ないかねない。そうなる要因は多々あるが、ここでは3つの大きなものを挙げておく:

p値の価値

himaginary氏がp値について取り上げています。この中で,Philip B. Starkが次のように述べております(訳は,himaginary氏のもの)

 科学の進歩の一部は、データに関する説明の候補を除外することから成り立っている。p値は、ある説明が適切かどうかを評価する助けとなる。評価の対象となる説明は「帰無仮説」と呼ばれることが多い。
 もしp値が小さければ、説明が誤っているか、説明は正しいが何か起こり難いことが起きたか、のいずれかである。その起こり難いことの確率はp値に等しい。小さなp値は説明が誤っている強い証拠である。即ち、データはその説明に疑義を投げ掛けている、ということである。
 もしp値が大きければ、その説明はデータを適切に表現している。ただ、それでもその説明が誤っている可能性はある。大きなp値は説明が正しい証拠にはならない。説明が誤っている証拠の欠如は、説明が正しい証拠ではないのだ。もしデータが少量もしくは低品質ならば、あまり証拠を提供することはできず、そこで話は終わる。
 説明が適切か否かの明確な線引きは存在しない。科学的な文脈が問題となるのだ。
 p値は説明が正しいと仮定して計算される。p値は説明が正しい確率ではない。
 p値は効果の大きさないし重要性を測るわけではないが、実際の効果と偽の効果を区別する助けになる。その点で、効果量や信頼区間の推計を補完する。
 また、p値は、「効果量」という概念が意味を持たない状況でも使用できることがある。そのため、効果量や信頼区間の推計が役に立たない状況でも役に立つ可能性がある。…
 多くの分野や多くの学術誌では、p値が0.05のようなある閾値より低い場合、そしてその場合のみ、結果が科学的に立証された、と見做している。これは科学としても統計学としても劣悪なやり方であり、pハッキングや選択的報告や多重性の無視や不適切ないし不自然な帰無仮説といった方法で分析を「弄ぶ」インセンティブを研究者に与えてしまう。
こうした誤用は、後で間違いであることが明らかになったり再現ができなかったりする科学的「発見」につながりかねない。それが現在の科学の「再現性危機」の一因となったのである。

ファーマ「価格変化がランダムであることと市場効率性が等価だと皆が思っていた時期も昔はありました」

himaginary氏曰く

市場の効率性の概念がはっきりしてくるに連れ、以前に私が開発した取引ルールがサンプル外では機能しなかった理由は、価格変化がランダムだから、ということに気付いた。当時の人々は、そうした価格変化のランダム性が効率的市場の意味するところだと考えていた。今の我々はそうではないことを知っている。市場の効率性が意味するのは、現時点で利用可能な情報では均衡期待リターンからの逸脱は予測できない、ということである。しかし、均衡期待リターンは時間を追って予測可能な形で変化し得る。その場合、価格変化が完全にランダムになるとは限らない。

himaginary氏の最近の更新は,市場の効率性に関するものが散見されて,それがどれもとても興味深いです。

via himaginaryの日記