WSJ, Three, Four, Five? How Many Board Seats Are Too Many?

Directors at public companies spend an average of 248 hours a year for each board served, up from nearly 191 hours in 2005, according to surveys by the National Association of Corporate Directors. The tallies cover tasks such as attending meetings, travel and chats with management. “It’s more of a job now,” observed Peter Gleason, the association’s president.

多すぎる独立取締役が企業価値を減少させるか業績を減少させるという議論

Ohio State UniversityのDavidoff教授(別名deal professor)が,多すぎる独立取締役に反対する旨の記事を書いています。また,UCLAのBainbridge教授が同意の上,補足しています

The pendulum today has swung toward boards of almost all independent directors. But these situations are not ideal either, according to studies. They largely find that the good effects from majority independent boards disappear with “super independent” boards. Such companies are less profitable. At least one study has found that the more oversight a board provides, the better monitoring that results but the worse the performance, regardless of whether it is independent or not.

via N.Y. Times Dealbook, PB.com

独立取締役の選任を強制する規定を取引所が導入することができるか,規制の導入をどのように理解することができるか

思いつきで書いているので,全くもって自信がありませんが,「独立取締役の選任を強制する規定を取引所が導入することができるか,規制の導入をどのように理解することができるか」について考えてみます。

前提として,次の点が挙げられます。

  • 自主規制は,既存の理解では,「主たる直接の目的 は,取引の公正の確保にあり,この目的はひいては投資者保護」を目的としていると理解されているようです1 。そもそも,取引の公正の確保と投資者保護という目的は,市場の効率性ひいては社会厚生に影響を与えますし,間接的に影響を受けるのですから,金融商品取引法が1条で挙げられている「資本市場の機能の十全な発揮」や「国民経済の健全な発展」も目的に入っていると解釈されるべきでしょう。

  • 上場契約の規定や上場契約で企業統治に関する条項を追加することができるかに関する議論は,無視します2

議論があるところですが,とりあえず,独立取締役の選任が投資家保護に資するという前提で議論します。まず,金商法84条2項3号を見てみます。

(自主規制業務)

第八十四条  金融商品取引所は、この法律及び定款その他の規則に従い、取引所金融商品市場における有価証券の売買及び市場デリバティブ取引を公正にし、並びに投資者を保護するため、自主規制業務を適切に行わなければならない。

2  前項の「自主規制業務」とは、金融商品取引所について行う次に掲げる業務をいう。

一  金融商品、金融指標又はオプション(以下この章において「金融商品等」という。)の上場及び上場廃止に関する業務(内閣府令で定めるものを除く。)

二  会員等の法令、法令に基づく行政官庁の処分若しくは定款その他の規則又は取引の信義則の遵守の状況の調査

三  その他取引所金融商品市場における取引の公正を確保するために必要な業務として内閣府令で定めるもの

最初に2項3号にある,「取引の公正を確保するために必要な業務として内閣府令で定めるもの」を見てみます。金融商品取引所等に関する内閣府令の7条になります。

(自主規制業務)

第七条  法第八十四条第二項第三号 に規定する内閣府令で定めるものは、次に掲げるものとする。…

四  上場する有価証券の発行者が行う当該発行者に係る情報の開示又は提供に関する審査及び上場する有価証券の発行者に対する処分その他の措置に関する業務

五  法第八十四条第二項第一号 及び第二号 に掲げる業務並びに前各号に掲げるもの(以下「特定自主規制業務」という。)に関する業務規程その他の規則(金融商品等の上場及び上場廃止に関する基準並びに会員等の資格の付与に関する基準を除く。)の作成、変更及び廃止

六  特定自主規制業務に関する定款の変更(金融商品等の上場及び上場廃止に関する基準並びに会員等の資格の付与に関する基準に関する定款の変更を除く。)に係る総会又は株主総会の議案の概要の作成

4号および5号は,直接に上場された発行者の企業統治に介入することを授権していると読めるでしょうか。4号の「上場する有価証券の発行者に対する処分その他の措置に関する業務」は,「その他の」という用語が使われ知恵るので,「処分」は「措置」に含まれます。「措置」がどのくらい広いのかによるのですが,例示の内容が「処分」なので,解釈の幅が限定されているように思います。

他に授権を定めた条文があるのかもしれないですが,この4号および5号から授権があると解釈することはできないでしょうか。

あるとすれば,「上場に関する授権について,取引所が企業統治を含めた規制を定めているのだから,上場後に関しても授権があると解釈されるべき」というものでしょうか。上場時に関する企業統治に関する規制として,有価証券上場規程は,例えば,株券等に関して,207条1項2号から4号までで(A) 企業経営の健全性,(B) 企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性および(C) 企業内容等の開示の適正性を要件として挙げています。

仮に,独立取締役の選任が投資家保護に資するとします。次の問題は,投資家保護を含めた社会厚生の増大に資するかです。社会厚生が増大するのであれば,問題はありません。社会厚生が増大しない場合には,(1) 投資家保護に資するが,ほかに社会厚生を減少させる要因がある独立取締役の選任規制を認めるべきかという問題があります。この問題は,(1a) 取引所は,社会厚生を減少させる規定は一律に制定すべきでないし制定させるべきではないという考え方と,(1b) 社会厚生を減少させるとしても,取引所が自主規制の機能として独立取締役の選任規制を選択し,上場会社が自主的に上場する市場を選択しているのだから問題ないという考え方がありそうです。後者について,更に,(1b-1) わが国において,上場市場は,日本取引所グループの独占状態で市場間競争が期待できないにも拘わらず,この解釈を維持できるかという問題がありそうです。

結局,良くわかってない理由は,法政策の問題として議論すべきなのか,法解釈の問題として議論すべきなのかがよくわかっていないからのようにも思えます。どちらの問題として捉えても,結局答えが出ないのかもしれませんが。

  1. 金商法84条1項,神田秀樹=黒沼悦郎=松尾直彦編著『金融商品取引法コンメンタール3自主規制機関』224頁(商事法務,2012)〔大島眞〕。 []
  2. 考えると興味深いですが,私の理解では,現在の東証の上場契約の条項は,「1.取引所が現に制定している及び将来制定又は改正することのある業務規程、有価証券上場規程、その他の規則及びこれらの取扱いに関する規定(以下「諸規則等」という。)のうち、会社及び上場される会社の株券(以下「上場株券」という。)に適用のあるすべての規定を遵守すること。2.諸規則等に基づいて、取引所が行う上場株券に対する上場廃止、売買停止その他の措置に従うこと。」というごく簡単なものです。 []