米国証券規制の勉強を独学でするのは、難しいように思えます。ただ、金融商品取引法をある程度理解しているのであれば、母法である米国証券規制もある程度は独学できるようにも思えます。
米国証券規制を勉強するのであれば、私の一押しは、James D. Cox, Robert W. Hillman, Donald C. Langevoort, Ann M. Lipton & William K. Sjostrom, Securities Regulation: Cases and Materials (9th ed. 2019)です(異論はあろうかと思います)。理由は、証券法制に対するメンテナンス具合が一番緻密だからです。版が変わると、細かいところが修正されていることが多く、それを実感できます。第9版で著者が増え、構成が少し変わった所があり、読者としては戸惑いもありますが、長期的には、その方が良いのでしょう。
次に、挙げるべきは、John C. Coffee, Jr., Hillary A. Sale & Charles K. Whitehead, Securities Regulation: Cases and Materials (14th ed. 2020)でしょうか。こちらも定番でして、人によってはCHLLSよりもこちらの方を評価するかもしれません。確かに、ケースブックとしての伝統や格式は、こちらのほうが上であるように思えます。もとを辿るとRichard W. Jennings & Harold Marsh, Jr, Securities Regulation: Cases and Materials (1963)です。
ここで、Stephen J. Choi & A.C. Pritchard, Securities Regulation: Cases and Analysis (5th ed. 2019)を挙げます。この書籍は、情報開示を中心に勉強するのであれば、十分な情報を提供するものと思います。しかし、業規制や他の分野の説明が十分ではないという欠点があります。実務家が情報開示を勉強する場合限定という感じでしょうか。
次に、Hazen先生の著作です。Hazen先生の著作は、調べ物に向いているように思えます。
- Thomas Lee Hazen, Securities Regulation in a Nutshell (2021)
- Thomas Lee Hazen, The Law of Securities Regulation (2021) (Hornbook series)
- Thomas Lee Hazen, Securities Regulation, Cases and Materials (10th ed. 2020)
- Thomas Lee Hazen, The Law of Securities Regulation (7th ed. 2020)
最後に、Louis Loss, Joel Seligman & Troy Paredes, Securities Regulation (4th ed. 2006)とLouis Loss, Joel Seligman & Troy Paredes, Fundamentals of Securities Regulation (7th ed. 2018)に言及しておきます。前者は、学習用というよりは、調べ物のためだと思います。もちろん、証券規制を専門にするのであれば、前から読み進めるということもできると思いますが、どこまで論文の役に立つかは疑問です。後者は、前者よりは学習に向いていると思いますが、出版のタイミング等との関係で必要な情報が載っているのかご確認ください。権威があるので、論文執筆時に参照すると良いでしょう。
また、幾つかの書籍が日本語で出版されております。論点を理解したり、全体像を掴むために最初に読むのに有益という気がします。
- 山本雅道『アメリカ証券取引法入門—基礎から学べるアメリカのビジネス法—〔改訂版〕』(第一法規、2019)
- 黒沼悦郎『アメリカ証券取引法〔第2版〕』(弘文堂、2004)
- マーク・I・スタインバーグ(小川宏幸訳)『アメリカ証券法』(レクシスネクシスジャパン、2008)
- 日本証券経済研究所編『新外国証券関係法令集アメリカ〈1〉サーベンス・オクスリー法』(日本証券経済研究所、2007)
- 日本証券経済研究所編『新外国証券関係法令集アメリカ〈2〉信託証書法ほか』(日本証券経済研究所、2008)
- 日本証券経済研究所編『新外国証券関係法令集アメリカ〈3〉証券法、証券取引所法』(日本証券経済研究所、2008)
〔2022年1月17日追記〕
米国では、学習用にhornbookがありまして、証券規制も例外ではありません。最近は、あまり読みませんが(そういえば、新版は買ってもいません)、勉強し始めた頃は、複雑な規制が整理されていて役に立ちました。忘れてしまった論点を思い出す場合にも有益なように思えます。
まずは、安定のPalmiter先生です。新版が出ていることに今気づきました。定期的に改定してくださっているので、ありがたいことです。Hazen先生のものは読んだことがありませんので、コメントを控えます。
- Alan R. Palmiter, Examples & Explanations for Securities Regulation (8th ed. 2021)
- Thomas Lee Hazen, Principles of Securities Regulation (5th ed. 2020)
一応、GilbertのSecurities Regulationも挙げておきます。個人的には、こちらの方をよく参照しましたが、今となっては古いため、こちらを参照するのは控えたほうが良いように思えます。
- Niels B. Schaumann, Gilbert Law Summaries Securities Regulation (7th ed. 2007)